車のベストライディングポジション

フットレストの使い方

左足が担う重要な役割

オートマチック車(AT車)の普及により、クラッチ操作から解放されたドライバーの左足は、運転中に手持ち無沙汰になりがちです。多くの人が、ペダルの左側にあるスペースを単なる休憩場所として認識しており、なんとなく足を置いているだけ、あるいは足を組んだり手前に引いていたりするケースも見受けられます。

しかし、あのスペースに設置されているフットレストは、本来リラックスするためだけのものではなく、安全かつ正確な運転を行うための「体を固定する装置」としての重要な機能を持っています。特にカーブを曲がる際や、万が一の急ブレーキが必要な場面で、その真価が問われることになります。

運転中、車には前後左右に様々なGがかかります。このとき、左足がしっかりとフットレストを踏ん張っていないと、体幹が不安定になり、体は無意識のうちにバランスを取ろうとします。

その際、ドライバーはハンドルにしがみつくことで体を支えようとしてしまうのです。ハンドルは本来、タイヤの向きを変えるための精密機器であり、体を支えるための手すりではありません。腕や肩に余計な力が入った状態では、繊細なハンドル操作ができなくなるばかりか、とっさの回避行動が遅れる原因にもなります。

フットレストを左足でしっかりと踏み込み、背中をシートのバックレスト(背もたれ)に押し付けることで、下半身と体幹をガッチリと固定する。
これによって上半身、特に腕の力が抜け、ハンドルを柔らかく握ることができるようになるのが、理想的なドライビングフォームなのです。

正しい位置調整と踏ん張れる距離感の作り方

フットレストの効果を最大限に発揮するためには、ドライビングポジションの合わせ方がカギとなります。よくある間違いが、アクセルとブレーキを踏む右足に合わせてシート位置を決めた結果、左足がフットレストにギリギリ届くか届かないか、という遠すぎる位置になってしまっているパターンです。

これでは、いざというときに踏ん張ることができません。シート位置を調整する際は、お尻をシートの奥まで深く腰掛けた状態で、左足でフットレストを強く踏み込んだときに、膝に少し余裕(曲がり)が残る位置を基準に合わせるのがポイントです。膝が伸び切った状態では力が伝わりにくく、逆に近すぎて膝が窮屈に曲がってしまうと、長時間の運転で疲労が溜まってしまいます。

また、足首の角度も重要です。自然に足を伸ばした角度でソール全体がフットレストの面に接するのが理想ですが、車種によっては角度が合わず、つま先だけで触れているような状態になることもあります。この状態では踏ん張りが効きにくいため、かかとをフロアにつけてつま先で押すのか、足裏全体で押すのか、自分の車と体格に合ったもっとも力が入りやすいポイントを探ってみてください。

正しい位置が決まれば、カーブで体が外側に振られそうになったとき、瞬時に左足に力を込めることで体をシートに押し付け、目線のブレを防ぐことができるようになります。

足が届かないときは後付けパーツでカスタムする

「シートを前に出すとハンドルが近すぎる」「どうしてもフットレストまで足が届かない」といった悩みを持つドライバーも少なくありません。市販車は平均的な体格に合わせて設計されているため、小柄な方や、逆に大柄な方にとっては、純正のフットレストの位置や角度がしっくりこないことは珍しくないのです。

また、純正のフットレストはカーペット素材や樹脂製であることが多く、滑りやすかったり、踏み心地が頼りなかったりすることもあります。その場合は、カー用品店などで販売されている後付けフットレストや調整キットの導入を検討してみましょう。

もっとも手軽なのは、純正の上から被せるカバータイプや、高さを出すためのブロックタイプです。フットレストの表面位置を手前に数センチ近づけることができるため、シート位置を変えずに左足の踏ん張りをサポートしてくれます。

また、スポーツ走行を好むドライバーに人気なのが、剛性の高い金属製のバータイプのフットレストです。丸い棒状のフットレストは、足裏のどの位置でも食いつきが良く、強い力で踏み込んでもビクともしないため、車との一体感が劇的に向上します。

さらに、高さや角度を無段階で調整できる高機能なキットも販売されています。自分専用にカスタマイズされたフットレストは、長距離ドライブでの疲労軽減にも大きく貢献します。「たかが足置き」と侮らず、左足の環境を整えることで、安全運転とドライビングの楽しさを手に入れましょう。