電動アシスト自転車の発進テクニック
強烈なアシスト力とペダルの関係
街中で快適に走れる電動アシスト自転車(e-bike)ですが、普通の自転車と同じ感覚で乗ろうとすると、思わぬ事故につながることがあります。その最大のリスクが潜んでいるのが発進時です。電動アシスト自転車には、ペダルを踏み込む力を感知するトルクセンサーが搭載されており、センサーが力がかかったと判断すると、モーターが即座に強力なパワーでサポートを開始します。そのため、信号待ちなどで無意識に片足をペダルに乗せて体重をかけていると、意図せず車体がドン!と前に飛び出すロケットスタートのような現象が起きるのです。
車重が軽い普通の自転車なら足で踏ん張って止められますが、20〜30kg近い重量がある電動自転車が急発進すると、ブレーキをかけても制御しきれず、前の車や歩行者に追突してしまう危険性があります。
また、昭和世代には馴染み深い、片足でペダルを漕ぎながら助走をつけてまたがるケンケン乗りも、電動自転車では厳禁とされています。不安定な姿勢でペダルに体重をかけた瞬間にアシストが最大トルクで介入するため、身体が置いていかれてバランスを崩し、そのまま転倒するケースが後を絶ちません。
正しい発進の手順は、まずサドルにしっかりとまたがり、ブレーキを握った状態で準備すること。漕ぎ出すほうのペダルを時計の2時の位置(少し高め)にセットし、周囲を確認してから、ゆっくりと踏み込むのが鉄則です。ペダルに足を乗せるのは、走り出すその瞬間だけという意識を持つことが、ハイパワーな乗り物を操る上での第一の安全策です。
バッテリーを長持ちさせる回転数
電動だから重いギアでも楽に進めると思い込み、変速機を常に一番重い3速やトップギアに入れたままにしていませんか?実はこれ、モーターとバッテリーに過度な負担をかけるもっとも悪い乗り方です。電動アシストユニットのモーターは、低い回転数で大きな力を出そうとすると、大量の電力を消費する特性を持っています。重いギアでグイッと力を込めてゆっくり漕ぐよりも、軽いギアでクルクルと足を速く回すほうが、モーターの効率が良く、バッテリーの消費を大幅に抑えることができるのです。
信号で止まる前には、必ずギアを1速、または軽いギアに落としておく癖をつけましょう。発進時の踏み込みが軽くなり、モーターが必要とする電力も少なくて済みます。スムーズに加速してスピードに乗ってきたら、徐々にギアを上げていくのがスマートな乗り方です。
自動車のマニュアル車が、発進時に必ずローギア(1速)を使うのと同じ理屈です。
常に重いギアで発進を繰り返していると、アシストユニット内部のギアやチェーンが摩耗しやすくなり、故障の原因にもなりかねません。軽いギアで発進し、足の回転数でスピードを稼ぐという乗り方をマスターすれば、1回の充電で走れる距離が目に見えて伸びるはずです。
サドル高と足つきのバランス
スポーツタイプの自転車ではサドルは高くして足が伸び切るくらいが良いと言われますが、重量級の電動アシスト自転車の場合は、少し事情が異なります。電動自転車は、バッテリーやモーターが車体中心部の低い位置や、あるいは荷台の下などに配置されており、重心バランスが独特です。
さらに、子供乗せシートや買い物かごに荷物が満載されている場合、総重量は相当なものになります。この状態で、つま先立ちになるような高いサドル位置に設定していると、停車時にバランスを崩した際、重い車体を支えきれずに立ちゴケしてしまうリスクが高まります。
安全を最優先にするなら、サドルの高さは両足のつま先がしっかりと地面に着くあるいは片足ならベタ付きできる程度に調整するのがベターです。確かにサドルが低いとペダルを漕ぐ効率は多少落ちますが、電動アシストの力があるため、膝への負担はそれほど気になりません。それよりも、信号待ちや急停車のたびにフラつく恐怖を感じないことのほうが重要です。
特に、バッテリーがハンドルの近くにあるタイプなどは、ハンドル操作が重くなりがちなので、とっさの時に足で踏ん張れる安心感は何物にも代えがたいものがあります。パワフルで便利な電動アシスト自転車のパワーと重量を正しく理解し、人間が主導権を持ってコントロールしましょう。
